三毛猫の銅像が有名な、公園の噴水のベンチの前にて。 朝早く、セカセカと歩いている時の事。 前から見慣れた面影の人物が来る。 そして、私達は出くわし、驚きと一緒に、久しさを共感した。 僅かだけど10年振りの再会だった。 帽子をとって、 ごきげんいかがと聞く。 かかとをひねって、 うるわしいですと答える。 薔薇の棘でも見るかのような目をして、お互いは 婦人服を着た私とドレスの彼女。 「どちらへ行かれます?」 私の右手が彼女を 「大富豪のパーティへ」 重量感のあるスカートが少しだけゆれ、 彼女が聞いた。 「あなたはどちらへ行かれます?」 私は久しさを絶やさぬように、努めて普通を装った。 「務めている会社へ」 私達の現実味は、今日とて崇高に高められている。 ただ、お互いの距離感はみるみる離れていってはいたけど。 「「時間です、行きますね」」 ほぼ同時の会釈と共に私達はすれ違った。 澄み渡る空模様が二人の上で広がっている。 この間、もう一度会う約束は、されてはいない。 今ならまだ間にあるかもしれない。 振り返るとそこに、笑顔があるのかもしれない。 でも、いいのだ。 これが私達のベクトルなのだから。 次会う時は、両手の指で弦をはじいて演奏するハープの吟遊詩人と、 チェリーセイジの木の実の紅茶を片手に、 他愛無く、息子の話でも 場所はそう、天にも近い国などで。 戻る |